ポストに、差出人のない封筒が入っていた。私宛てだった。
中身を開いた瞬間、私の頭の中は真っ白になった。
「あなたの夫は、不倫をしています」
そう書かれた紙には、相手の名前と、電話番号まで添えられていた。
これは、その封筒が私の元に届いてから一週間、私たち夫婦がどう揺れて、どう向き合って、最終的に「オープンマリッジ」というひとつの答えにたどり着くまでの記録だ。
「なんだ、不倫ディズニーは合ってたのか」

封筒を開けた瞬間、正直に言うと、驚きよりも先に「なんだ、やっぱりか」という感覚があった。
実は私自身、結構な葛藤の末に、少し前から婚外の関係に踏み出していた。
夫に隠れて、アプリで知り合った人とライトな関係を楽しんでいる。
だから密告文書を読んだとき、頭をよぎったのは罪悪感より先に「先を越されていた」という、なんとも言えない感情だった。
そしてもうひとつ、腑に落ちたことがあった。
少し前、息子の誕生日にディズニーへ行こうとしていた夫が、急に「職場の人たちとランドとシー両方行くことになった」と、なんだか気まずそうに言っていたことがある。
家族旅行では一度も泊まりがけになったことがないのに、そのときは2泊。
旅行先なんて普段まったく計画しないくせに、と違和感だけは覚えていた。
→ 夫の不倫ディズニー(婚外旅行)の何が嫌なのか言語化してみた
——ああ、あれが「不倫ディズニー」だったのか。
女の勘は、当たるものらしい。
その日は全然眠れなかった。「ちょっと頭の中を整理しよう」と思っても、次から次へと考えが押し寄せてくる。
裏表のない、まっすぐな人だと思っていた夫。
だからこそ自分は、婚外に踏み出すまでにあれほど迷ったのに。
「もっと早く知りたかった」という気持ちと、「タダのシタ妻だと思っていたけど、実はサレ妻からのスタートだったみたい」という、笑うしかない皮肉が同時にやってきた。
私は、離婚してほしいと思われているんだろうか。
夫の帰りたい場所は、もうここじゃないのかもしれない。
それとも、彼女に私が変わればいいと思っているんだろうか。
自分の人生はもうどうでもいいけれど、子どもの人生だけは守りたい——そんなことばかり考えていた。
密告文書を「利用」するという発想
一晩明けても、頭の中はぐるぐるしていた。
このタイミングで、いっそ夫にこう言ってやろうか。
「こんなのポストに入ってたんだけど。彼女がいたんだね、全然知らなかった。私も外で彼氏作ってもいいかな?」
自分にとっては、これが一番都合のいい着地点な気がした。完全に「利用するだけ」の展開だとわかっていながら。
でも同時に、いろいろな疑問も浮かんでくる。
この文書を送った人は、どんな気持ちで投函したんだろう。
夫が「あいつがやったな」と誰かを疑って、その人との関係が悪くなったりしないだろうか。
そもそも、夫が彼女とどうなりたいのかなんて、私が気にする必要があるんだろうか。
登場人物が多すぎて、まるでドラマみたいだった。
夫の不倫相手は、家に来たことがあるという。どんな気持ちで、私の顔を見ていたんだろう。
「夫が、一人の女性と不倫関係にある」
——その事実を知ってしまうと、それまでの「疑いの段階」とはまったく違う世界に、突然放り込まれたような感覚になった。
「二人で私の悪口を言い合ってるんだろうか」
「毎回あの時間に会っているんだろうな」
「子どもが何歳になったら離婚するとか、もう決めているんだろうか」
存在を意識せずにはいられなくなった。
そして、この密告文書を送った人の心境も気になった。
「知らないままの奥さんが不憫」なのか、「夫と不倫相手が嫌い」なのか、「二人に痛い目を見させたい」のか。
送るまでにきっとものすごく迷っただろうし、送ったからには、私が何か行動を起こすのを待っているはずだ。
電話番号まで律儀に書いてあったくらいだから。
でも——せっかく教えてもらったのに、私は私で今の関係を楽しんでいて、夫と別れる気もない。
期待通りの展開にならず申し訳ないね、というのが正直な気持ちだった。
名前が判明してから、体が動かなくなった
夫の不倫相手の名前がわかってしまった。
その瞬間から、うまく息が吸えなくなった。
夫の前で笑顔になれない。
夫が近くに来ると、体が固まる。
頭の中に、常に「その人」の名前がちらついている。
ぼーっとして、ハッとすることが増えた。
「夫には性欲がない」——ずっとそう思っていたのに、外で発散できていたなんて。
婚外している自分がこんなにシリアスになっているのはおかしい、とも思った。
夫はまさか、今このタイミングで不倫がバレたなんて思ってもいないだろう。
何年も関係を続けていて、それでも家に帰ってきているんだから、これまでと何も変わらないはず。
ただ、「密告文書」を送った人が、「奥さんが何か行動を起こすかな」と様子をうかがっているだけのはずだ、と自分に言い聞かせた。
本当は、思い切り泣きたかった
もう、結婚生活と性は切り離して考えたほうがいいんじゃないか——そんなことも思うようになっていた。
ある夜、子どもと慌ただしくシャワーで済ませる毎日から離れて、ひとりでゆっくりお風呂に浸かった。何ヶ月ぶりだろう。まだ、涙は出ない。思い切り、泣きたかった。
翌日、夕食の後片付けをしながら、アレクサで音楽をかけて口ずさんでいた。
前日の残りでカレーうどんを作りながら、意図せずMISIAの「アイノカタチ」が流れてきて、思わず熱唱してしまった。
「あのね、大好きだよ」 「愛が溢れ涙こぼれるんだ」 「ずっと大好きだよ」 「ああありがとう」
この曲は、夫と初めてカラオケに行ったときに歌った曲だった。
歌いながら、こみ上げてくるものがあって、気づけば泣いていた。
「どうしたの、なんで泣いてるの?」
夫がいつものように抱きしめながら聞いてきた。
そのまま胸に飛び込んで、思い切り泣きたかったけれど、「大丈夫。また話を聞いてほしいとき言うね」とこらえた。
そして勢いで「大好きだよ」と言った。
夫はくしゃっと笑って、「俺も大好きだよ」と返してくれた。
——その女性にも、同じように言うのかな。
ひとつだけ確かなのは、体を重ねて気持ちが高まって言う「だいすきぃ」とは、まったく違う種類の「大好き」だということだった。
探偵ごっこと、静かに募る覚悟
数日の間、私は落ち着かない毎日を送っていた。
夫が元同僚たちを家に呼んでBBQをするという話が出たとき、真っ先に思ったのは「この中に、密告文書を送った人がいるんだろうか」ということだった。
でも夫と仲のいい人ばかりだから、そんなことはしないだろう。
「実は夫のことが好きで、奥さんとも彼女とも別れさせて自分が付き合いたい」なんて人がいたら、まるで恋愛ドラマだ。
——そんな想像までしてしまう自分に、我ながら苦笑いした。
もし、あの文書が届いたとき、夫が先に気づいていたら。
怪しんで中身を見ていたら。目の前で取り出していたら。想像するだけでゾッとした。
たまたま私がひとりで見つけたのは、本当にタイミングがよかったのだと思う。
息子のSwitchを直そうと手に取ったとき、画面に「例の名前」が表示されて、心臓が跳ねたこともあった。
「〇〇って誰?」と写真つきで送ってみようか、それとも自分も混ぜてもらおうか——そんなことを本気で考えていた。
インスタを開けば、無意識に夫のフォロワー一覧を見ている自分にも気づいた。
あの名前が、頭から離れなかった。
同時に、こうも思っていた。夫の不倫に傷ついている自分も、同じことをしている。
だから許すも何もないし、これを機にきちんと話し合うべきなんだろう。
相手が「いつか一緒になるつもり」なのかどうか、そこだけはどうしても気になった。
年齢と、既婚かどうかも知りたかった。
既婚者で、パートナーに黙って会いに行けてしまう時点で、「そういうことができてしまう人」なのは確定している。
だから、一緒にならないほうがいいと思った。
婚外していてよかった、と思う自分がいた
心と体は分けられなくても、「色恋」と「生活」は分けられる。
ただ「色恋」がしたいだけなのだと、自分の気持ちを整理していった。
夫も同じなら、何も言うつもりはなかった。
正直なところ、夫の不倫が発覚する前に、自分も婚外の関係を持てていてよかったとも思った。
連絡が取れる相手がいなかったら、この数日、心が持たなかったかもしれない。
都合が合わずほとんど会えていなかったけれど、返信だけは早い、なんでも言い合える年下の彼にすぐLINEで話を聞いてもらった。
そして、一番好きな同年代の彼にも「ヘルプ」というかたちで連絡した。
内容は電話やLINEでは伝えず、会ってから話すことにした。
「明日、話します」
数日間、モヤモヤを抱えたまま過ごして、ついに限界がきた。
「明日、夫と話します」
金曜日のBBQで様子を見ようと思っていたけれど、それまで待てなかった。
密告文書を見せて聞きたいことを整理した。
いつから?
相手は独身なの?
結婚したい、つまり離婚したいということ?
その場合、子どもはどうするつもりなの?
結婚生活を続けるなら、「外に恋人がいる」状態でお互い納得できる?
もちろん、夫を問い詰める前に、自分のことも打ち明けるつもりだった。
前日の夜、「明日話があります」とだけ伝えておいた。
夫は翌日休みで、息子を送り出したあと、すぐに話すことになりそうだった。
本当は夫の不倫を先に追及したい気持ちもあったけれど、まずは自分から始めることに決めていた。
方針はシンプルだった。全力で謝る。そして、外で発散する許可をもらう。
そこまで話してみて、夫が「実は俺も……」と切り出してくれるのかどうか、様子を見る。
あとは流れに任せる。
密告文書は、タイミングが来たら使う——そう決めていた。
対話の日
朝の支度と子どもの送迎を済ませ、リビングのソファーで、夫と向かい合って正座した。
「謝らないといけないことがあります」
そう切り出して、すべてを話した。
「もともと性欲がめちゃくちゃ強くて、ひとりですることも多くて。何度か誘ったけど断られたのが本当にしんどくて、我慢できなくなって……結論から言うと、既婚者向けのマッチングアプリで相手を見つけて、ホテルに行ってしまいました。ごめんなさい」
月に一度くらい、食事とホテルに行っていたこと。お金はいつも相手が出してくれていて、自分は電車代だけだったこと。前から、いろんなお店にご飯を食べに行きたいと思っていたことも、正直に伝えた。
「不快な思いをさせて、本当に申し訳ありません」
そこでしっかり土下座をした。
1分ほどして顔を上げると、夫は表情を大きく変えることもなく、ぼんやりと空中を見つめていた。
そしてしばらくして、静かに口を開いた。
夫「めちゃくちゃ驚いたけど、そんな思いを我慢させてたなんて、気づかずにごめん。俺もそんな我慢をさせてるなんて思わなかったから、もっと聞いてあげたらよかったな。そんなふうにさせてしまってごめん。まいかとしては、今後もその人と会いたい感じ?」
嫌な予感がした。
私「はい、できれば」
夫「でも、なんで今このタイミングで言おうと思ったの?」
私「実は昨日、息子のSwitchがちゃんと置けてなくて。直そうと思って手に取ったら、画面が変わって、夫くんの隣に〇〇(密告文書に書かれていた下の名前)って名前が出てて。まさか好きな人がいたのかと思って」
夫は少し考えるような顔をしたあと、答えた。
夫「あーそれは、後輩がやりたいって言ったから、やらせてあげたときのだよ。通信ができるんだよ」
——なるほど、そういう態度ね。この時点ではまだ、密告文書のことは切り出していなかった。
夫が私の告白を受けて、自分からも何かを打ち明けてくれるんじゃないか、という淡い期待があった。
でも、夫は何も言ってくれなかった。
渡した、あの封筒
長い沈黙のあと、私は「ちょっと取ってくる」とボソッと言って、席を立った。
私「先週の金曜日、ポストにこれが入ってたんだけど」
夫の目の前に立ち、なんて言おうか考えたけれど、結局何も浮かばず「これ」とだけ言って封筒を渡した。
体感5分、長い沈黙が続いた。
相変わらず表情はほとんど変わらない。
「さすが度胸があるな」と、こんな状況なのに妙に感心してしまうくらいだった。
やがて夫が、紙を見たまま口を開いた。
夫「んー、この人とはね、そりゃー1回や2回あったかもしれん」
——かもしれん? 思わず「し・れ・んんんんん!?」と聞き返すと、夫は秒で言い直した。
夫「ありました。ごめんなさい」
夫「今も話を聞いたりすることはある。でも体の関係はない」
私「今も会ってるんだね?」
夫「そんな頻繁にじゃない。たまに。連絡は取ってない」
私「はぁ!? そんなことある?」
夫「ジムにいるから、顔を合わせることはある」
夫は毎日同じ時間にジムに通っている。ジムで会う、それはつまり毎日会っているということなんじゃないか——その瞬間、自分でも驚くほどの大声で叫んでいた。
「はぁぁあああ!? ジム一緒かよーーー! もう何を信じたらいいんだよーーー!!」
過呼吸寸前になり、いったん別室に避難した。
息を整えて、もう一度
好きでもない人と、毎日顔を合わせるはずがない。
そう怒り沸騰している自分に気づいて、「まだ夫に対して嫉妬できるんだ」と、どこか他人事のようにも思った。
嫉妬とは少し違うのかもしれない、とも。
密告文書の「現在も不倫関係にあります」という一文を信じ切っていた私は、夫と彼女が今も会っているという事実を、なぜか必死で吐き出させようとしていた。
呼吸を整えてリビングに戻ると、夫が続きを話し始めた。
夫「契約してるジムがたまたま同じだっただけで、顔を合わせても挨拶と少し話す程度」
私「毎朝、合わせて行ってるんじゃないの?」
夫「それはない。あっちの行く時間は知らないし、会ったとしても本当にちょっと話すだけ。今は本当に連絡も取ってない」
私「思い合ってるんじゃないの? 体の関係は?」
夫「この子は後輩で、同じ職場だったときに、飲み会の帰りにたまたまタクシーが一緒になって、ホテルに行った。酔ってた勢いっていうのもある」
私「2回も?」
夫「そう。また同じ状況で誘われて」
私「それ、2回で終わるわけある!?」
夫「うん、ほんとに今は会ってない。出来心のワンナイトでした」(いや、ツーナイトな!)
私「今は体の関係ないって言ったけど、もう何も信じられないし、正直どっちでもいい。この人は独身なの?」
夫「そう、独身」
独身かどうか、そしてふたりが一緒になるつもりなのかどうか——私が一番気にしていたのは、そこだった。
私「私、昔不倫してて。まじで早く離婚しないかなって思ってた。中で出されて妊娠したらさすがに別れるだろうとか、そこまで考えてたから。絶対辛いじゃん。この人はきっと、夫くんのこと好きだろうし」
夫「うーん、今俺のことをどう思ってるかはわからないけど、聞いた話では付き合ってる人がいるらしい」
私「……今は何も信じられないけど、これだけは本心で本当のことを教えてほしい。この人と一緒になるつもりはない?」
夫「ない」
私「ジム変えてって言ったら、変える?」
夫「うん、いいよ」
私「そうだ、ディズニーは? 彼女と行ったんでしょ!」
夫「え? あれは……」
夫「あれは、仲のいい前の職場のメンバーって言ったじゃん」
私「だって、話も一切しないし、写真も見せないから、絶対彼女のお願いを聞いてあげたんだって思った。家族とは1泊旅行しかしないのに、彼女とは2泊で、しかもディズニー。シーとランド両方行ってるじゃん。まじで嫌だった。だから今年の旅行、ディズニーは嫌って言ったんだよ」
夫「え、いや、ごめん。これ、写真」
差し出されたスマホの画面には、私も何度も顔を合わせたことのある、仲良しメンバーの笑顔が写っていた。
彼女じゃなかった
私「…………ほんとや。は? はは。なんや……。彼女じゃなかったんか」
その瞬間、涙がぶわっと溢れた。
私「私、これ見た瞬間、あぁそんな前から好きな人がいたんだって、めちゃくちゃ落ち込んでたんだから。『現在も不倫関係にあります』って見て、わざわざこんなことまでして嘘は言わないだろうって信じ切って、この5日間、まじで苦しかった。妊娠させたらそっちを選ぶの? 自分の子どもはいいの? って、本当に考えたくないところまで考えてしまった。でも、好き同士じゃないんだよね? これからも帰ってくるんだよね?」
夫「はい。2人と一緒にいたいです。帰る家はここだけです」
私「あれ、でも今会ってないなら性欲はどうしてるの? てか性欲ある? ムラムラすることないの?」
夫「うーん、ほんとにたまに少しあるけど、今は趣味の時間が楽しいから、それで満たされてるのかもしれん」
私「私が他の人とするのは嫌?」
夫「うーん、正直考えたくないというか、今は考えないようにしてる。でも俺は満たしてあげられないから、許す」
私「ごめんなさい」
夫「その代わり、今日会いに行くとか、わざわざ言わないでほしい。あと、気持ちが変わって本気になってしまったときは言ってほしい」
私「わかりました。それはないです。ありがとうございます!」
涙のあとに残ったもの
結局、夫の話は「浮気」で終わっていて、私が一番恐れていた「彼女と一緒になる」という展開はなかった。
そして私も、夫公認で婚外の関係を続けられることになった。
最後に私は言った。
私「この話し合いの場を、この紙が作ってくれたんやね。感謝」
ふたりで、封筒に向かってお辞儀をした。誰が送ったのかはわからないけれど、思い当たる人は3人ほどいるらしい。
住所を知る立場にいて、夫のことをよく思っていなくて、嫌がらせをしそうな人——夫はそう分析していた。
「指紋で特定できないかな」と言いつつ、結局は何もしないことに決めたようだった。
何はともあれ、私たちは「オープンマリッジ」というかたちに辿り着いた。
いま振り返ると、数年前に夫がしていて、本来なら墓場まで持っていくはずだった関係を、わざわざ掘り起こして「今も続いている」と伝えてきてくれたおかげで、不倫をされる側の気持ちを、まるでジェットコースターのように疑似体験させてもらった。
しかも結果的に、夫婦の仲はより深まった。体験料を払わなければいけないくらいだと思う(笑)。
そしていま思えば、「不倫報告文書」という表現より、「不倫密告文書」のほうがしっくりくる。
「報告」だと、探偵に依頼して届いたもののような響きがあるから。(実際夫は紙見た瞬間、私が探偵に依頼したものだと思ったらしい。)
わたしたちの、変な日常
数日後のBBQでは、夫の元同僚4人のうち、ひとりの女性が不自然なタイミングで「はい、家族写真撮るよー!」と、私たち3人を集めて写真を撮った。
ちょっと不穏な笑顔を返してみたけれど、それ以外は特に何もなかった。さすがに、この中にはいなさそうだった。
そして、この一連の出来事を、私は自分の恋人にも全部聞いてもらった。
カフェで話し始めたけれど、隣の席との距離が近すぎて集中できず、場所を変えることになった。
話が一区切りついたとき、彼はこう言った。
「大変だったね。……最初、もう会えなくなるんかと思った。よかった」
長く、ぎゅっと抱きしめてくれた。その一言に、キュンとした。
私も、彼と会えなくなることが、いちばん辛かった。「同じ気持ちだ」と感じられる瞬間は、やっぱりいいものだと思う。
おわりに
匿名の封筒がひとつ届いただけで、夫婦の関係も、自分の気持ちも、ここまで大きく揺さぶられるものかと、いまさらながら実感している。
苦しかった数日間だったけれど、あの密告文書がなければ、私たち夫婦はきっと、お互いの本音を知らないまま、それぞれの「外の時間」を隠しながら過ごしていたと思う。
結果として、隠しごとのない「オープンマリッジ」というかたちに辿り着けたのは、皮肉にも、あの匿名の一通のおかげだった。
送り主が誰なのかは、たぶんこの先もわからないままだろう。
でも、もし読んでいたら伝えたい。
おかげで、私たちは前よりずっと、正直な夫婦になれました。
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ちなみに私が婚外相手と出会った場所は以下↓↓